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開催記録アーカイブ:第17回世界地震工学会議(17WCEE)

開催概要

会 議 名 和文名:第17 回世界地震工学会議
英文名:17th World Conference on Earthquake Engineering (17WCEE)
主  催 公益社団法人日本地震工学会、日本学術会議
開催期間 令和3年9月26日(日)~10月2日(土)
開催場所 仙台国際センター(宮城県仙台市)
参加状況 72か国・地域 3,123人(国外:2,125人、国内:998人)

17WCEEホームページはこちらから

会議結果概要

  1. 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯
    世界地震工学会議(WCEE)は、国際地震工学会(IAEE:International Association for Earthquake Engineering)が4 年ごとに開催する会議であり、1956年に第1回が開催され、2020 年の会議は第17 回目である。
    地震工学分野で最も歴史のある国際会議であり、日本での開催は17WCEE が3回目の開催となり、過去の開催は、1960年の第2回、1988年の第9 回を日本で開催している。
    17WCEE の開催は、2017年1月の前回第16回会議(16WCEE/チリ・サンチァゴ)期間中に開催されたIAEE総会において、投票の結果、2020年9月に日本(仙台市)で開催することが決定された。
    これを受け、日本地震工学会は、日本開催準備のために、17WCEE運営委員会を2017年に設置し、開催の準備を進めることとなった。2020年4月に新型コロナウィルス感染症拡大の状況を踏まえ、1年延期を決定し、東日本大震災の10 周年にあたる2021年の9月26日~10月2日に、同じ会場で開催することとなった。

  2. 会議開催の意義・成果
    地震工学は、多くの自然災害のうち地震による被害を防御・軽減せしめるための科学技術を総合する学問分野である。
    特に現在では、地震の発生機構や地震動の解明を扱う地震学分野や社会インフラの挙動・被害軽減技術を扱う耐震工学分野のみならず、土木、建築、地盤、機械、原子力施設などの社会を構成するすべての施設のいわゆるハード技術となる耐震技術とともに、都市・地域のリスク評価、復旧・復興、情報・避難、医療支援分野などを含むいわゆるソフト技術と相互に関係しながら総合的な地震災害対策研究が遂行されている。
    近年では、2011年の東日本大震災の甚大な被害を契機として、津波の予測・シミュレーション技術、大規模数値シミュレーション技術、リアルタイム地震防災技術等の研究が著しい発展を遂げている。
    また、我が国では、実大構造物の破壊実験を可能とする世界最大研究施設として、E-ディフェンス(実大三次元震動破壊実験施設)での実験研究が進められてきている。日本の地震工学研究の水準は、世界に類を見ない数多くの激甚な地震被害の経験から高められ、その研究成果は、世界における地震災害の軽減に大きく貢献している。
    また我が国は、当該分野における今後益々のリーダーシップが期待されている。

  3. 当会議における主な議題(テーマ)
    「災害に強い社会を目指して(Towards Disaster Resilient Society)」をメインテーマに、「多分野連携と国際連携による震災軽減」、「原子力発電所と地震・津波問題」、「大規模数値シミュレーションによる地震防災技術の展開」、「長周期/長継続時間地震動による構造物の応答」、「スマートシティと都市防災」などを主要題目として、研究発表と討論が行われた。

  4. 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割
    17WCEE では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、初めての試みとなる会場開催とオンライン配信を併用したハイブリッド形式を採用し、下記(6)にもある通り、時差に配慮したプログラム構成やオンライン配信のメリットを最大限活用したオンデマンド配信など様々な工夫により、活発な発表・討論を実現することができ、今後の大規模国際会議の新たなスタイルを提示することができたと考える。
    残念ながら海外からの会場参加は実現しなかったが、会場である仙台市は東日本大震災を経験した都市のひとつであり、その震災から得た教訓、知見、復興を踏まえた地震工学研究とその実践のあり方を世界と議論・共有できた。
    また17WCEE では以下に示すような、いずれも従来のWCEE には見られない新たな試みもいくつか企画・実行することができた。
    1. 最新の研究成果の発表とその知見の共有だけでなく、地震工学コミュニティが世界的規模で今後議論すべきテーマについて次世代を担う若手研究者が中心となって「集中的に議論する場と機会」を Future Direction Session として企画・提供し、そこでの議論の結果を Resolution して閉会式で披露した。
    2. 陸上に遡上した津波が構造物ならびにその周辺に与える影響(波圧や浸水深、流速など)を予測するTsunami Blind Prediction Contest を企画し、その結果を披露する特別セッションを開催するとともに精度の高い予測に成功した研究者(日本から2 名、スペインから1 名)を表彰した。この種のコンテストは海岸工学分野においても例のないもので、企画のユニークさならびにその予測精度の高さにおいて、津波工学における日本のプレゼンスを強く示すことができた。
    3. 17WCEE 開催期間中に実施したミニシンポジウムを起点に、Post-17WCEE のイベントとして「断層変位」を主テーマとしたワークショップをオンライン形式で 2 回開催した。いずれも40 を超える参加者を得て成功裏に実施することができた。
    4. IAEE との連携企画であるMasters シリーズでは、著名な地震工学研究者の基調講演に加えて業績を書籍として取りまとめ会場にて配布した。

  5. 次回会議への動き
    次回開催年・国:2024 年、イタリア(ミラノ)前記(4)に記載した新たな試みはいずれも次回 18WCEE に引き継がれることが期待されるものである。
    例えば、1)や 3)については 18WCEE においても同様の企画と本 Resolutionに基づく新たな特別セッション(OS)の提案、Post-Conference WS のようなより自由度の高い企画との組み合わせが期待されること、2)については本Contest を企画した日本人研究者グループがその第 2 弾を実現できるように準備を始めていること、4)については次期 IAEE 会長も本企画を継承する意向であること、から、今回の成果が単発ではなく、地震工学コミュニティにおいてグローバルかつ持続的に展開される動きにあることは、これまでには見られなかった特筆すべき事項である。

  6. 次回会議への動き
    次回開催年・国:2024年、イタリア(ミラノ)前記(4)に記載した新たな試みはいずれも次回 18WCEE に引き継がれることが期待されるものである。
    例えば、1)や 3)については 18WCEE においても同様の企画と本 Resolutionに基づく新たな特別セッション(OS)の提案、Post-Conference WS のようなより自由度の高い企画との組み合わせが期待されること、2)については本Contest を企画した日本人研究者グループがその第 2 弾を実現できるように準備を始めていること、4)については次期 IAEE 会長も本企画を継承する意向であること、から、今回の成果が単発ではなく、地震工学コミュニティにおいてグローバルかつ持続的に展開される動きにあることは、これまでには見られなかった特筆すべき事項である。

  7. 当会議開催中の模様
    2020 年冬頃から世界中に感染が拡大した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、2020 年4 月に 2020 年 9 月から約1 年の延期を決定した。
    さらに、2021 年6 月になっても新型コロナウィルスは終息の気配を見せず、飛沫感染の危険性が高いWelcome Reception およびGala Dinner の中止を決定した。仙台での現地参加およびオンライン参加の両方を可能とするハイブリッド形式で開催することを決定し、 12 月に公表した。オンライン海外参加者に時差がある場合でも、会議参加と活発な議論ができるよう、会議時間を 9 時~21 時と長めに設定し、さらに現地開催の 1 週間前(2021年9 月20 日)からExtended Conference Period (ECP)を設け、プレゼンテーションのビデオ動画や発表資料を事前に公開した。
    またECP は現地開催の約3 か月後(12 月24 日)まで延長し、セッション動画についても同時にオンデマンド公開した。現地開催当日の開会式には天皇皇后両陛下にオンラインにてご臨席を賜り、現地には合計約300 名が参加、オンラインにて 12 月 24 日までに合計約 13,300 名(延べ数)が参加し、盛況のうちに会期を終了した。

  8. その他特筆すべき事項
    世界地震工学会議は、地震工学およびその関連領域の研究や実践・実装の成果・計画等を発表・討議する4年に一度の国際会議で、世界80 ヵ国・3,000 人を超える研究者、実務者が参加する大規模国際会議であり、地震工学分野の唯一の世界組織である国際地震工学会が所管する最大規模かつ最高水準の国際会議である。
    日本は、本会議の発足以降 3 回目を開催する国であり、米国、チリの 2 回開催を上回る最多開催国となっている。我が国は、地震工学・防災研究とその実践において米国等と並び世界をリードする先進国であるが、一方で 2011 年東日本大震災や 2016 年熊本地震をはじめとする多くの激甚な地震被災経験を有する。防災環境都市を標榜する仙台市において、本世界会議を開催し、これらの震災経験と教訓を世界規模で共有するとともに、我が国が得意とする耐震化技術、損傷制御技術等の最新研究成果を世界に情報発信し、途上国を含む地震国と先導的に連携することにより、本分野における日本のプレゼンスが一層高まることが期待される。
    さらに、本会議ではこれまでになかった新たな試みの一つとして「Brainstorming Session」を企画し、これからの地震工学研究の在り方について議論するセッションを計画した。すなわち、従来の国際会議では研究者らの研究成果を「発表する」ことに主眼が置かれることが通例であったが、本セッションでは①今後30 年を見据えて地震工学分野として取り組むべき研究テーマについて「議論する」場を提供し、②その候補テーマと議論の中心となるべき次世代の若手研究者を国内外から選定し、③事前のコーディネートと十分な準備期間を経て本会議で集中議論するとともに、④その結果と内容は基調講演招へい者(議論の中心となる若手研究者のメンター役となるシニア研究者を想定)との議論ならびに講評を経てResolution として記録することを計画した。
    本企画は本会議の国際母体である国際地震工学会からも高い評価を受けている。本企画は上記④により今回の会議だけでなく、次回以降へも引き継がれて行くことを期待しており、単に学術成果の発表だけでなく、その連携の重要性が高まりつつある分野や急速に発展しつつある地震工学の周辺領域の動向と予測も踏まえ今後どのような研究を展開すべきかに関する Research Agenda を議論する機会を次世代の研究者に提供するとともに、地震工学研究における世界的潮流の変化点を日本から発信する好機となったと考える。

市民公開講座結果概要

開催日時 2021年9月26日(日)13:30~16:20
開催場所 東北大学災害科学国際研究所多目的ホール
主なテーマ、
サブテーマ
主テーマ:震災復興制度、
サブテーマ:被災地仙台から発信するより良い復興に向けた未来への提言
参加者数、
参加者の構成
135 名、一般市民、識者、世界地震工学会議参加者
開催の意義 海外との比較を通して我が国の復興制度の現状の課題を整理するとともに、将来その発生が懸念されている災害に対する事前復興や、より良い復興へ向けた提言を被災地仙台から市民参加により発信した
社会に対する還元効果と
その成果
世界各国から地震工学や防災に関係する多彩な分野の研究者が一堂に会する機会に、米国ノートルダム大学のTracy Kijewski-Correa准教授から、世界各地における復興支援のケーススタディを通じた基調講演および島田明夫教授から過去からの復興制度のレビューを通じた東日本大震災での改善点と課題について基調講演を頂いた。
パネルディスカッションでは、関連の専門家がそれぞれの視点で当時の復旧・復興の対応と今後の改善について議論を行い、海外との比較、復興制度の現状課題整理などを通じ、仙台開催となった世界地震工学会議の意義を市民に伝えると共に、より良い復興について議論を深めることができた。
一般市民はオンライン参加となったが、チャット機能により質問を受け付け、事務局側からのリアルタイム回答とパネルディスカッションの議論への反映を行うことで、市民が参加できる形の開催とした。今後類似の公開講座があれば是非参加したいというご意見を頂くなど好評を得た。

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