第18代会長 髙田毅士
本年は関東大震災から丁度100年という記念すべき年でもあります。この間、地震工学は大いに発展しました。しかし、地球の営みは次の大きな地震を引き起こす準備をしています。今年2月にはトルコ・シリア大地震が発生し、多くの犠牲者と甚大な被害が出ました。被害調査報告が近いうちになされますが、被害速報から、設計上、施工上、被災後の緊急時対応、等々に多くの課題があるように見受けられました。我国ではこれほどの被害にはならないとは思われますが、個々の構造物を構成する部材の耐震設計や構造計画、メンテナンスの視点に加えて、「人命を守る」、「インフラを維持する」といったマルチスケールの視点が重要です。さらに、空間・時間軸上の性能確保、所謂、レジリエンスの概念が今後一層重要となります。
この性能確保を確実なものとするためには個々の専門分野の深化と同時に分野を超えた横断的・俯瞰的なアプローチが必要です。これは本学会の設立主旨であり、本学会は分野横断と全体連携のための学会です。これを一層推し進めるには、以下の三点が重要と考えています。1連携の場の提供、2目標の共有、3目標実現のためのアプローチの理解が必要です。1は本学会が周りを巻き込んでリードし実施すべきものであり関連学会との連携の場としてのプラットフォームを恒常的に築くことが重要です。2については、安全性、経済性、持続可能性などの多様な社会インフラの維持と発展を目標とし、3として、その実現に向けた方法論を共有し積極的に展開しなければなりません。
就任に当たり、これらを肝に銘じて活動にあたりたいと思います。関連学会との積極的な交流の実践に加えて、学会自身の活動基盤も確固とする必要があります。具体的には、会員数の維持・増大、特に若手会員の増大、それから、研究委員会数の増大、年次大会の一層の活性化、等々が挙げられます。これらの活動の実践には、対面とオンライン形式の有効な使い分けを検討して活動にあたりたいと思います。
一方、海外関連では、清野前会長らのご尽力により台湾の国家地震工程研究中心(National Center for Research onEarthquake Engineering, NCREE)と台湾地震工学会、インドネシア地震工学会、タイ王立工学会との学術協定の締結がなされ連携の場が拡大されました。加えて、本学会の長年の悲願でありました世界地震工学会議を仙台国際センターにて2021年9月26日~ 10月2日ハイブリッド形式を採用して開催しました。コロナ禍という逆境でありながら、目黒、中埜、清野諸氏の指揮の下、無事に終わり、また、新時代の国際会議開催の良い見本ともなりました。本誌に開催報告「第17回世界地震工学会議(17WCEE)を終えて(No.45, 2022.2)」が詳細に記載されております。
来年には18WCEE(ミラノ、2024年6月30日~ 7月5日)が対面で開催予定です。地震工学会として学会をあげて全面支援する予定で日本からも多くの参加を期待しています。会員におかれましては、アブストラクト投稿ならびに参加登録の手続きの方よろしくお願いします。
最後になりましたが、これからの2年間、日本地震工学会の伝統を守りつつ、新しい時代の活動を進めて参りたいと思います。引き続き、ご支援ご協力のほど、どうぞよろしくお願いします。
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