東日本大震災における福島第一原子力発電所の過酷事故の主たる原因は、原子力発電所における津波対策の不備にあった。かかる事故を決して再発させないためには、不確定性の高い地震・津波ハザードを前提とするリスク論的意思決定の枠組とそれを着実に実行する技術ガバナンスの確立が不可欠である。これには当然、個々の技術要素が的確に形成されていることが前提となる。
津波対策の基礎となる津波学・津波工学の近年の進歩は著しく、津波波源の形成、津波伝播・遡上のシミュレーション、津波が物体や構築物に及ぼす波力の算定などに顕著な成果が挙げられている1),2),3)。これに対し、構造工学的観点から耐津波設計を行うための工学体系は未整備の状況であり、その構築が急務である。
津波による外力作用は、浸水、波力(波圧)、洗掘、浮力、揚力、などの多様な様相を持ち、その対策には防水・耐水・避水による柔軟な方法論が必要となる4)。特に、動力駆動装置、配電盤、計測制御板などの電器品が無防備な状態にあると、水に接触することが直ちに機能喪失という、いわゆるクリフエッジ効果により、きわめて脆弱性が高くなる。こうした点は、材料の耐力と変形性能(ねばり)により耐震性能を担保する地震動対策と様相が異なる。
このような観点から、原子力発電所の津波に対する安全を確保するための構造工学的体系を「耐津波工学」と規定し、その具体的方法論を体系化することを目的に、日本地震工学会に「原子力安全のための耐津波工学の体系化に関する調査委員会」(略称:耐津波工学委員会)を設立するものである。
我が国で経験する近地津波では、津波の到達前に強震地震動を受けるから、地震動による劣化と津波来襲時の挙動を組合せる検討も必要である。また、地震・津波作用下で原子力発電所に起こりうる事故シナリオと、安全に関わる機器・構築物を落ちなく取りあげ、対策の基本を明らかにすることが求められる。当委員会は、これらの事項を対象に「耐津波工学」の体系化を行う。さらに、原子力発電所の地震・津波リスク評価に不可欠の津波PRAおよび地震・津波PRA (PRA=確率論的リスク評価)においては、ハザード・フラジリティー・事故シナリオをそれぞれ的確に推定することが必要であるが、「耐津波工学」は、フラジリティー評価手法の確立に直接寄与するものである。
実務においては、規制側では原子力安全基盤機構(JNES)において耐津波設計の検討が、事業者側では電気協会において耐津波設計技術規定の検討が開始されようとしている。当委員会は、これらの活動をサポートする学術的な知見を提供することが期待される。
文献
1) 土木学会原子力土木委員会津波評価部会:原子力発電所の津波評価技術、2002.2.
2) 土木学会原子力土木委員会津波評価部会:津波評価手法の高精度化研究、土木学会論文集B, Vol.63, No.2, pp.168-177, 2007.6.
3) 首藤伸夫・佐竹健治・松冨英夫・今村文彦・越村俊一 編:津波の事典、朝倉書店、2007.11.
4) 亀田弘行:原子力発電所の安全に関する地震工学的課題、日本地震工学会誌、第15号、東日本大震災特集号、2011.10、pp.97-102.
2012年9月~2014年8月
役職 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
委員長 | 亀田 弘行 | 京都大学 独立行政法人 原子力安全基盤機構 |
副委員長 | 今村 文彦 | 東北大学災害科学国際研究所 災害リスク研究部門 |
宮野 廣 | 法政大学大学院デザイン工学研究科 | |
幹事 | 東 喜三郎 | 独立行政法人 原子力安全基盤機構 耐震安全部 |
蛯澤 勝三 | 独立行政法人 原子力安全基盤機構 | |
香月 智 | 防衛大学校 システム工学群 建設環境工学科 | |
越村 俊一 | 東北大学災害科学国際研究所 災害リスク研究部門 | |
佐藤愼司 | 東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 | |
高田 毅士 | 東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻 | |
中村 隆夫 | 大阪大学大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 | |
成宮 祥介 | 関西電力株式会社 原子燃料サイクル室 | |
平石 哲也 | 京都大学防災研究所 沿岸域土砂環境研究領域 | |
委員 | 安部 浩 | 独立行政法人 原子力安全基盤機構 耐震安全部 |
有川 太郎 | 独立行政法人 港湾空港技術研究所 アジア・太平洋沿岸防災研究センター | |
有賀 義明 | 弘前大学大学院理工学研究科 | |
飯田 晋 | 東北電力株式会社 火力原子力本部 原子力部 | |
石黒 幸文 | 中部電力株式会社 発電本部 土木建築部 | |
糸井 達哉 | 東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻 | |
桐本 順広 | 電力中央研究所原子力技術研究所 原子力システム安全領域 | |
庄司 学 | 筑波大学システム情報系 | |
杉野 英治 | 独立行政法人 原子力安全基盤機構 耐震安全部 | |
高橋 郁夫 | 清水建設株式会社 技術研究所 原子力技術センター | |
高橋 智幸 | 関西大学社会安全学部 安全マネジメント学科 | |
楊井 知啓 | 東京電力株式会社原子力設備管理部 | |
中埜 良昭 | 東京大学生産技術研究所 | |
中村 晋 | 日本大学 工学部 土木工学科 | |
奈良 博 | 株式会社東芝 電力システム社 原子力電気設計部 | |
奈良林 直 | 北海道大学大学院工学院 エネルギー環境システム専攻 | |
西村 裕一 | 北海道大学大学院理学研究院 地震火山研究観測センター | |
日高 慎士郎 | 独立行政法人 原子力安全基盤機構 耐震安全部 | |
藤田 聡 | 東京電機大学工学部 機械工学科 | |
藤間 功司 | 防衛大学校システムシステム工学群 建設環境工学科 | |
松山 昌史 | 電力中央研究所地球工学研究所 流体科学領域 | |
美原 義徳 | 鹿島建設株式会社 原子力部 |
第1回委員会
資料1_1_委員名簿
第2回委員会 (2012年12月27日)
第2回委員会議事次第 (PDF/73KB)
第2回委員会議事録 (PDF/300KB)
資料2_1 第1回委員会(121206)議事録 (PDF/389KB)
資料2_2 委員名簿
資料2_3 福島原子力事故の教訓 (PDF/4919KB)
資料2_4 担当委員リスト(案) (PDF/236KB)
資料2_5-1 第1章骨子 (PDF/235KB)
資料2_5-2 第2章骨子 (PDF/315KB)
資料2_5-3 第3章骨子 (PDF/316KB)
資料2_5-4 第4章骨子 (PDF/394KB)
資料2_5-5 第5章骨子 (PDF/111KB)
資料2_5-6 第6章骨子 (PDF/188KB)
資料2_5-7 第7章骨子 (PDF/210KB)
資料2_5-8 第8章骨子 (PDF/232KB)
資料2_5-9 第9章骨子 (PDF/207KB)
資料2_5-10 第10章骨子 (PDF/248KB)
資料2_6 活動経過_R07 (PDF/236KB)
第3回委員会 (2012年3月29日)
第3回委員会議事次第 (PDF/63KB)
第3回委員会議事録 (PDF/244KB)
資料3_1 第2回委員会議事録 (PDF/277KB)
資料3_2 委員名簿
資料3_3 東日本大震災による 女川原子力発電所の被害状況の概要 および更なる安全性向上に向けた取り組み (PDF/3621KB)
資料3_4 担当委員リスト(案) (PDF/173KB)
資料3_5-1 成果報告書の目次 Ver.2 (PDF/197KB)
資料3 5-2_第10章 耐津波工学関連の解析コード 骨子 (PDF/329KB)
資料3_6-1 第2 章 地震津波工学に求められる原子力安全(仮) (PDF/482KB)
資料3_6-2 原子力安全の目的と基本原則 (PDF/511KB)
資料3_6-3 原子力安全の目的と基本原則 (PDF/297KB)
資料3_6-4 原子力発電所の設計と評価における地震安全の論理について (PDF/286KB)
資料3_6-5 地震、津波による影響と事故シナリオの考え方 (PDF/270KB)
資料3_7_130213_活動経過_R08 (PDF/135KB)
参考資料 女川原子力発電所における平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震により発生した津波の調査結果について (PDF/6154KB)
第4回委員会 (2012年5月16日)
第4回委員会議事次第 (PDF/59KB)
第4回委員会議事録 (PDF/252KB)
資料4_1-1 第3回委員会議事録 (PDF/245KB)
資料4_1-2 委員名簿
資料4_2-1 浜岡原子力発電所の地震・津波対策について (PDF/10.44MB)
資料4_3-1 担当委員リスト(案) (PDF/173KB)
資料4_3-2 成果報告書の目次 Ver.2 (PDF/237KB)
資料4_4-1 第3章 原子力発電所の地震・津波事故シナリオ (PDF/3.46MB)
資料4_4-2_報告書案3.2章の作成方針 (PDF/1.42MB)
資料4_4-3 報告書案3.3章の作成方針 (PDF/1.22MB)
資料4_4-4 参考:IC(非常用復水路)など (PDF/651KB)
資料4_5-1 活動経過 (PDF/137KB)
参考資料 原子力発電所の地震・津波事故のシナリオ (PDF/2.29MB)
第5回委員会(2013年6月12日)
第5回委員会 議事次第 (PDF/56KB)
第5回委員会 議事録 (PDF/241KB)
資料5_01_1_第4回委員会議事録 (PDF/253KB)
資料5_02-1_安全性向上に向けた取組み (PDF/2.23MB)
資料5_03-1_委員担当章希望リスト (PDF/173KB)
資料5_03-2_報告書目次案ver4 (PDF/228KB)
資料5_03-3_討議メモ=委員会で明確にすべき論点 (PDF/252KB)
資料5_04-1_報告書第3章目次案 (PDF/116KB)
資料5_04-2_耐津波工学委員会成果報告書4章の骨子案r2 (PDF/301KB)
資料5_05-1_活動経過_R11 (PDF/134KB)
第6回委員会(2013年7月22日)
第6回委員会 議事次第 (PDF/70KB)
資料6_01_1_第5回委員会議事録 (PDF/241KB)
資料6_03-1_アンケート調査結果一次集約 (PDF/566KB)
資料6_04-1_報告書目次案ver5 (PDF/205KB)
資料6_04-2_委員担当章希望リスト (PDF/170KB)
資料6_04-3_報告書各章の関連ver4 (PDF/471KB)
資料6_05-1_第5章骨子 (PDF/1.03MB)
資料6_06-1_活動経過_R14 (PDF/139KB)
第7回委員会(2013年9月6日)
第7回委員会 議事次第 (PDF/70KB)
資料7 01-1 第6回委員会議事録 (PDF/319KB)
資料7 02-1 国際関係の方針 (PDF/1,030KB)
資料7 03-1 担当委員リスト (PDF/171KB)
資料7 03-2 報告書各章の関連Ver8 (PDF/501KB)
資料7 03-3 報告書目次案Ver6 (PDF/202KB)
資料7 03-4 耐津波工学委員会で明確にすべき論点 (PDF/474KB)
資料7 03-5 コラム作用・設計と安全性照査 (PDF/162KB)
資料7 04-1 耐津波工学委員会フォーマット (PDF/213KB)
資料7 05-1 第6章構成と担当 (PDF/270KB)
資料7 06-1 原子力安全のための耐津波工学シンポジウム(案) (PDF/157KB)
資料7 07-1 活動経過 R15 (PDF/139KB)
第8回委員会(2013年10月31日)
第8回委員会 議事次第 (PDF/ 65KB)
資料8 01_1 第7回委員会議事録 (PDF/ 257KB)
資料8 02_1 報告書目次案ver7 (PDF/ 234KB)
資料8 02_2 報告書各章の関連ver9 (PDF/ 512KB)
資料8 02_3 委員担当章希望リスト (PDF/ 173KB)
資料8 02_4 討議メモ=委員会で明確にすべき論点r6 (PDF/ 645KB)
資料8 02_5 コラム作用・設計 (PDF/ 174KB)
資料8 03_1 耐津波工学委員会 報告書執筆用フォーマット (PDF/ 329KB)
資料8 04_1 耐津波工学シンポ企画案 (PDF/ 200KB)
資料8 05 7章 (PDF/1,078KB)
資料8 06_1 活動経過_R17 (PDF/ 192KB)
第9回委員会(2013年12月19日)
第9回委員会 議事次第 (PDF/62KB)
資料9_01-1 第8回委員会議事録 (PDF/257KB)
資料9_02-1 報告書目次案ver8 (PDF/183KB)
資料9_02-2 委員担当章希望リスト (PDF/173KB)
資料9_02-3 耐津波工学委員会 序 原稿v1 (PDF/162KB)
資料9_02-4 報告書各章の関連ver10 (PDF/366KB)
資料9_03-1 耐津波工学委員会 報告書執筆用フォーマット (PDF/269KB)
資料9_04-1 耐津波工学シンポ企画案 (PDF/176KB)
資料9_05-1 14JSEEオーガナイズドセッション申し込み (PDF/ 202KB)
資料9_06-1 8. フラジリティ評価 (PDF/1,167KB)
資料9_07-1 第9章の構成と執筆担当 (PDF/182KB)
資料9_08-1 海外における津波洪水対策 (PDF/1,119KB)
資料9_09-1 活動経過_R19 (PDF/141KB)
第10回委員会(2014年2月24日)
第10回委員会 議事次第 (PDF/55KB)
資料10_01-1 第9回委員会議事録 (PDF/229KB)
資料10_02-1 報告書目次案ver9 (PDF/182KB)
資料10_02-2 委員担当章希望リスト (PDF/172KB)
資料10_02-3 報告書各章の関連 (PDF/521KB)
資料10_02-4 耐津波工学委員会成果報告書4章の骨子案 (PDF/548KB)
資料10_03-1 耐津波工学シンポジウム (PDF/281KB)
資料10_03-2 耐津波工学シンポ-パネル討議r2 (PDF/86KB)
資料10_03-3 シンポジウム企画 (PDF/322KB)
資料10_04-1 耐津波工学委員会第10章003 (PDF/205KB)
資料10_04-2 第10章コード一覧 (PDF/328KB)
資料10_05-1 第11章 (PDF/99KB)
資料10_06-1 耐津波工学委員会 序 原稿v1 (PDF/162KB)
資料10_06-2 耐津波工学委員会 総説原稿v2 (PDF/369KB)
資料10_07-1 活動経過_R21 (PDF/266KB)
資料10_08-1 耐津波に関する技術規定・進行状況について (PDF/111KB)
第11回委員会(2014年5月9日)
耐津波工学委員会第11回委員会 議事次第 (PDF/66KB)
資料11 1-1 第10回委員会議事録(PDF/228KB)
資料11 1-2 委員名簿 (非公開)
資料11 2-1 原子力安全のための耐津波工学に関するシンポジウム開催(PDF/209KB)
資料11 2-2 原子力安全のための耐津波工学に関するシンポジウム実施報告(PDF/192KB)
資料11 3-1 原子力安全のための耐津波工学の体系化に関する調査委員(PDF/164KB)
資料11 3-2 2014年度委員会の運営体制(PDF/49KB)
資料11 4-1 第14回日本地震工学会シンポジウムオーガナイズドセッション(案)(PDF/211KB)
資料11 4-2 同シンポジウムホームページ(PDF/246KB)
資料11 4-3 同シンポジウムOSプログラム(PDF/491KB)
資料11 4-4 同シンポジウムOS企画案(PDF/108KB)
資料11 5-1 日本地震工学会 原子力安全のための耐津波工学の体系化に関する調査委員会 報告書目次案(PDF/198KB)
資料11 5-2 担当委員リスト(PDF/178KB)
資料11 5-3 報告書各章の関連(PDF/390KB)
資料11 5-4 報告書原稿の第一次原稿の集約結果と編集方針(PDF/328KB)
資料11 5-5-1報告書第一次原稿(その1) (非公開)
資料11 5-5-2報告書第一次原稿(その2) (非公開)
資料11 5-5-3報告書第一次原稿(その3) (非公開)
資料11 6 日本地震工学会 原子力安全のための耐津波工学の体系化に関する調査委員会の活動経過(PDF/205KB)
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