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首都圏における地震・水害等による複合災害への対応に関する委員会

委員会設置の背景と目的

近い将来に発生が懸念されている首都直下地震に関して、最近、東京都などの自治体や中央防災会議による被害想定結果が公表されている。これらの想定は、地震時には震度6強以上の激しい揺れや延焼火災が広範囲に生じ、死者は2万人に達するなど、といった悲惨な状況を提示している。一方,ゼロメートル地帯が広がる東京の低地などでは豪雨時の洪水や高潮等による大規模かつ長期間に及ぶ水害が懸念されている。最悪の場合、地震により堤防や護岸が壊れ、震災と水害による複合災害への対策も検討する必要がある。そのためには予防対策に加えて、発災時の対応を検討しておくことが大切である。しかしながら、想定される被災結果があまりにも甚大であるため、住民や企業関係者の中には対策をあきらめてしまうケースや、指定避難場所(大半は延焼火災に対する避難場所で、水害には対応できない)に逃げればよいといった程度しか考えていないケース、等が報告されている。

一方、歴史上、首都直下地震では想定されているような広大な範囲に震度6強以上といった激烈な揺れが発生したケースは知られていない(過去最悪の首都直下地震である1855年安政江戸地震も激しい揺れは下町低地など軟弱地盤の地域に限定)。次に生じる現実的な首都直下地震は、仮にM7クラスの地震が生じたとしても震源は小田原から伊豆方面、または50 kmより深い地震となり、首都圏の殆どの地域では震度5~6程度の中規模の揺れを生じる地震が起きる可能性が高いと考えられる。従って、公表されている最悪に近い被災状況への対策に加えて、可能性の高い現実的な被害への対応も検討しておくことも重要である。後者の場合、被害は限定的であり、現在の地震工学の知見を利用すれ被害を最小限に防ぐことが可能と考えられる。また、発災時に全員がすぐ避難するというよりは、その場で初期消火や救援救護などの適切な対処をして、2次災害を防ぐ方が最善の方法になると考えられる。このためにはまず可能性の高い被災の姿を詳細に検討することも必要である。

以上のようなことを踏まえて、大規模地震に加えて、現実的かつ可能性の高い中程度の揺れの地震に対して被災状況を予測し、予防と発災後の対応方法などを検討し,さらに水害も含めた複合災害への対策を検討することが急務である。このため、本研究委員会では、地域に密着した特別な検討委員会を開き、その成果を住民や商店、民間企業、ライフライン企業、自治体等に還元し、地震工学における研究の推進とともに、社会貢献を行うことを目指す。

なお,日本地震工学会「津波等の突発大災害からの避難の課題と対策に関する研究委員会(委員長:東京大学地震研究所・後藤洋三 氏)」をはじめ、日本建築学会など他の学会でも本委員会と関連する検討を行っており,密接に意見交換を行いながら進める。

設置期間

2014年4月1日~2016年3月31日

設置期間中の活動計画

東京は地形的に山の手と下町に大別され,両者で被害の発生や構造物などの特性が大きく異なる。そこで,両者の代表地区として新宿区の新宿駅周辺地域と足立区の北千住駅周辺地域を検討対象とする。検討結果は東京の全地区に適用することを念頭において、検討を進めていく。 対象とする地震動レベルとしては,レベル1(再現期間が数十年)とレベル2(同数百年)に加え、最大級地震などを想定したレベル3(同数千年以上)の3段階とし,それらによる被害や対応の違いを明確にする。具体的な検討内容は、以下の通りである。

(1)  想定すべき地震と地震動,地盤変状、水害などのハザード情報の収集・整理
首都圏の構造物の設計用地震動(レベル1・2)と検証用地震動(レベル3)の検討など
(2)  被害の予測
インフラ:道路、鉄道、堤防・護岸、橋、ライフライン、
建物:住宅、商店、オフィスビル、地下街
企業:町工場、工場
地域・エリア:延焼火災、震災・水害時の群集(避難者・帰宅困難者等)の動態
(3)  予防としての具体的な対策方法の提示
各構造物、地域・エリアに対してのハード・ソフト対策、自助・共助・公助の役割など
(4)  発災時の対応方法の提示
各構造物、地域・エリアに対して、原則として避難せず、被災に立ち向かう対策など
(5)  地域企業などのBCP、DCP/エリア防災計画の立案への利用方法の提示

委員

役職 氏名 所属
委員長 久田 嘉章 工学院大学
幹事長 大原 美保 土木研究所
幹事 小林 亘 東京電機大学
庄司 学 筑波大学
増田 幸宏 芝浦工業大学
委員 猪股 渉 東京ガス
大井 昌弘 防災科研
大森 高樹 日建設計シビル
加藤 孝明 東京大学
黒沢 大陸 朝日新聞
佐藤 正行 東電設計
末松 孝司 ベクトル総研
高田 和幸 東京電機大学
中村 孝明 篠塚研究所
古屋 治 東京都市大学
村上 正浩 工学院大学
山下 倫央 産総研
オブザーバー 安田 進 東京電機大学
後藤 洋三 東京大学
澤田 基弘 日建設計シビル
三上 貴仁 早稲田大学
村上 公哉 芝浦工業大学
山本 正直 放送大学大学院
東京都、新宿区、足立区の関係者

 

議事と資料

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