日本地震工学会は優れた研究により地震工学の分野で顕著な業績をあげた若手研究者を奨励するために「日本地震工学会・論文奨励賞」を2005年度より設置しました。受賞対象者(毎年2名以内)は、表彰年の前年度の12月31日から2年前までの期間に日本地震工学会論文集に掲載された論文の筆頭著者を原則として、受賞年度の4月1日において満35歳以下の正会員あるいは学生会員です。
2005年度論文奨励賞の受賞者は、該当する全ての受賞候補者の中から論文集編集員会による選考、および理事会による審議を経て、下記の2名と決定いたしました。心よりお祝いさせて頂きます。授賞式は本年5月22日に日本地震工学会の総会が建築会館で行われる予定です。
受賞理由:
本論文は,2000年鳥取県西部地震時に震源近傍で得られた強震
記録を用い、余震記録から表層地盤のS波構造を求め、本震時の
地盤非線形解析から基盤地震動を評価しています.これまで数の少な
かった震源近傍での入力地震動を仔細に評価しており、地震工学上有用
かつ発展性のある情報を提供している点が大いに評価されます.さらに
本論文は既往の研究結果との相違点と現在の問題点を明確にするばかり
でなく、多角的な検討を緻密に実施することで,得られた知見の有用性
や信頼性の高さも評価されます.よって本論文は結果に対する考察や検
証の能力に優れており、研究者としての将来が嘱望され,論文奨励賞に
相応しいと考えられます.
受賞理由:
本論文はインフラ施設のうち地中埋設管路の着目し,新潟県中越地震
による管路被害と地震動・斜面地形の関係について,将来の被害予測に
有用な結果を導いています.特に以下に示す3点で高い新規性を有して
いると考えられます。
1) 山岳被害地震である新潟県中越地震の水道管路被害から,震度 6強以上で斜面地形の影響が非常に大きくなるという新たな貴重な教訓 を導き出したこと.その際,地道な既存データの収集と分析のみなら ず,アンケートによって小千谷市の詳細震度分布を自ら作り上げた上 で,被害との対応を検討したこと.
2) 斜面の影響が都市型被害地震の典型である兵庫県南部地震のデータ から構築された従来の被害予測式では考慮されておらず,斜面地形にお ける予測式として問題があることを実証したこと.
3) 斜面地形の影響の効果を定量的に明らかにしたこと. 加えて,地道なデータの収集と分析より得られた結果は,信頼性と言う 観点でも高く評価されます.さらに定量的に示された斜面地形の影響の 効果は,斜面地形における水道管路被害の予測の精度向上と事前対策の 検討に大いに役立つ可能性があり、高い有用性が評価されます.よっ て,本論文が有する新規性,信頼性,有用性から,研究者としての将来 が嘱望され,論文奨励賞に相応しいと考えられます.
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