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2006年度日本地震工学会・論文奨励賞の受賞者発表

 日本地震工学会は優れた研究により地震工学の分野で顕著な業績をあげた若手研究者を奨励するために「日本地震工学会・論文奨励賞」を2005年度より設置しました。受賞対象者(毎年2名以内)は、表彰年の前年度の12月31日から2年前までの期間に日本地震工学会論文集に掲載された論文の筆頭著者を原則として、受賞年度の4月1日において満35歳以下の正会員あるいは学生会員です。

 2006年度論文奨励賞の受賞者は、該当する全ての受賞候補者の中から論文集編集員会による選考、および理事会による審議を経て、下記の2名と決定いたしました。心よりお祝いさせて頂きます。授賞式は本年5月24日に日本地震工学会総会(建築会館)で行われる予定です。

1.受賞者:藤本一雄 君(千葉科学大学危機管理システム学科)

  • 受賞論文:近接観測点ペアの強震記録に基づく地盤増幅度と地盤の平均S波速度の関係(2006年2月発行)
  • 著者:藤本一雄、翠川三郎

受賞理由:
 本論文は,広域な地震被害想定を行う際に簡易に地盤増幅を評価する手法として、近接観測点を用いて、硬質地盤の記録から軟質地盤の地盤増幅率を推定する経験式を提案しています。2点の観測記録から増幅率をもとめるアイデアそのものはかねてよりありますが、地盤非線形を考慮している点や簡易な評価法を提案している点に新規性と独創性が認められます。さらに、地震防災の観点から、このような大振幅時の地盤増幅度が精度よく求められることは重要であり、本論文の提案式は、有用性が高く評価できます。但し、条件の全く異なる地盤のデータを全て統計処理しており、結果のばらつきも大きく、現状では信頼性に改善の余地が見られます。また、大振幅時の強震記録の数はまだ十分とは言えないものの、筆者らも指摘しているように、最近の強震記録をデータセットに加えることにより、信頼性を向上させることが可能になると考えられます。よって、本論文が有する新規性、発展性から、研究者としての将来が嘱望され、論文奨励賞に相応しいと考えられます。

2.受賞者:白戸真大 君((独)土木研究所 構造物研究グループ基礎チーム)

  • 受賞論文:ファイバー要素を用いた数値解析による場所打ち杭基礎の変形性能評価(2006年11月発行)
  • 白戸真大、福井次郎、中谷昌一

受賞理由:
 本論文は、地盤内における場所打ち杭基礎の変形性能を評価するため、コンクリートの拘束効果などを考慮したファイバー要素を用いた数値解析と実験結果を丁寧に比較し、ファイバー要素の適用性、さらに課題を明確に示しています。ファイバー要素を用いた解析法、コンクリートの拘束効果を考慮した応力?ひずみ関係のモデル化手法自体は、すでに提案されている手法ですが、それらを地盤内の杭に適用するためにうまく組み合わせており、工学的な新規性が認められます。さらに、実務的な検討を行う上で、コアのみならず、かぶりコンクリートの応力-ひずみ関係に適切な配慮を行うことが必要なことが示された点や、今後の方向性が明確に示されていることなどは、今後の発展性が大いに期待されます。
 よって、推薦者は結果に対する考察や今後の方向性を適切に認識する能力は優れており、研究者としての将来が嘱望され、論文奨励賞に相応しいと考えられます。

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