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2008年度日本地震工学会・論文奨励賞の受賞者発表

 日本地震工学会は優れた研究により地震工学の分野で顕著な業績をあげた若手研究者を奨励するために「日本地震工学会・論文奨励賞」を2005年度より設置しました。受賞対象者(毎年2名以内)は、表彰年の前年度の12月31日から2年前までの期間に日本地震工学会論文集に掲載された論文の筆頭著者を原則として、受賞年度の 4月1日において満35歳以下の正会員あるいは学生会員です。

 2008年度論文奨励賞の受賞者は、該当する全ての受賞候補者の中から論文集編集員会による選考、および理事会による審議を経て、下記の2名と決定いたしました。心よりお祝いさせて頂きます。授賞式は本年5月21日に日本地震工学会の総会が建築会館で行われます際に実施されます。

1.受賞者:山口 晶 君(東北学院大学)

  • 受賞論文:軟弱粘土地盤のせん断特性と地震時の地盤挙動の関係 (第7巻 第1号、2007年2月掲載)
  • 著者:山口 晶,吉田望,飛田善雄

受賞理由:
 本論文は、軟弱粘土地盤の地震時の地盤挙動を調べるためにオンライン試験 を行った結果をまとめたものである。対象は粘性土地盤上に岸壁等の構造物が 存在する地盤である。地盤条件は水平成層地盤で、1質点というきわめて 簡素化した実験が行われており、簡素化することによって粘土層が地盤の地震 挙動に与える影響を、層分割の影響を考えずに直接得ることを目指している。 実験の結果、地表面の最大加速度の上限値は地盤の動的なせん断強度とせん断 剛性によって推定できることを明らかにしている。また、粘性土地盤は地震動 を繰返し受けた場合、地表面の最大加速度は大きくなり、地盤のせん断ひずみ の大きさには大きな変化がないことを示している。さらに、地震動終了後に 発生する粘性土地盤の沈下によって間隙比が減少し、見かけの圧密降伏応力が 増加することを確認しており、工学的に有用である。以上のことから、本論文 は論文奨励賞に相応しいと判断した。

2.受賞者:佐々木健人 君(慶應義塾大学)

  • 受賞論文:被害発生確率を用いた耐震等級の説明の有効性 (第7巻 第6号、2007年11月掲載)
  • 著者:佐々木健人、小檜山雅之

受賞理由:
 本論文は、住宅購入時の意思決定を支援する耐震等級の説明に関し、被害 発生確率を用いた説明方法が有効であることを、アンケート調査により検証 したものである。集計結果から、回答者が地震発生リスクを過大に認知して いること、求める耐震性能にばらつきがあることなどを明らかにしている。 本論文は、耐震等級が住宅の購入者に理解されていない現状に着目し、一般 市民を対象としたアンケート調査により理解度を改善する方法を提案した点が 高く評価される。また、アンケート調査により、建物被害リスクに関する一般 市民の認知度や、建物耐震性能の選好性も明らかした点も評価される。建物の 耐震化促進を誘引するための自然科学と社会科学の融合に基づいた研究アプ ローチであり、単なるリスクメッセージや説得的コミュニケーションに対して リスクコミュニケーションを前提とした調査・分析は有用性が高く、今後の 発展性も大いに期待できる。以上のことから、本論文は論文奨励賞に相応しい と判断した。

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