2002年地震学夏の学校参加報告
筑波大学第一学群自然学類4年 半田実歩
 毎年開催されている夏の恒例行事の地震学夏の学校は, 地震学に興味のある学生や研究者が集まり,暑い夏のひとときに寝食を共にしながら,地球科学関連の研究分野において第一線で活躍されている研究者の講義をじっくりと聞いて議論する場です。また,お互いの研究を披露し合い議論し合う場でもあります。
 今年度の夏の学校は、2002年9月14日〜16日の三日間、京都にある関西セミナーハウスで行われました。『震源過程研究の最前線』をテーマとして、地震波形などのわれわれが手にするデータを解析することで、地震発生過程について分かってきたこと・今後、分かると思われること・また、その理解の地震防災へのつながり方について考えました。
 金森博雄(カリフォルニア工科大)、佐竹健治・関口春子(産業技術総合研究所、久家慶子(京大理)、Jim Mori(京大防災研)(敬称略)といった著名な先生方を講師陣に迎え、興味深いご講演を聴くことができました。全体にゆったりとしたスケジュールにも関わらず、多くの質疑応答のためほぼ全ての講演で予定時間を延長し、非常に活発な議論が交わされました。参加者数は、講師・スタッフを含めて86名で、学生以外にも研究者・一般の社会人の方など地震に興味を持つ幅広い年齢層の皆さんが集まりました。また、地震学のみならず、工学分野や地質学分野など多岐の専門家が集まることで、より理解度の深い講演が行われたように感じられました。各講師の先生方のご講演のタイトルは以下の通りです。

  • 久家慶子(京大理)
    はじめての震源の物理(Quick guide of earthquake sources for beginners)
  • 金森博雄(カリフォルニア工科大)
    Global Seismicity, Earthquake Rupture Process, and Scaling Relations
  • 関口春子(産総研・活断層センター)
    内陸型地震の地震動予測:強震計記録と活断層情報にもとづく(Ground-motion prediction of inland earthquakes: based on strong-motion and acitve fault data)
  • 佐竹健治(産総研・活断層センター)
    海溝型地震の発生履歴と長期予測:おもに津波にもとづく(Recurrence and forecast of subduction-zone earthquakes: mostly based on tsunami data)
  • Jim Mori(京大防災研)
    地震の始まりを見る(Looking at Initiations of Earthquakes)
  • 金森博雄(カリフォルニア工科大)
    Microscopic Physics of Earthquakes and Its Implications for Damage Mitigation
 金森先生のご講演は、一日目にGlobal Seismicity, Earthquake Rupture Process, and Scaling Relations、二日目にMicroscopic Physics of Earthquakes and Its Implications for Damage Mitigationの両題目で行われました。一日目のご講演は、地震物理学の基本的概念・法則、地震破壊過程の複雑性や非地震すべりの物理学的性質についてでした。二日目のご講演では一日目の講演を踏まえて、地震におけるエネルギーバランス・断層運動における断層面環境の違いによる熱プロセス・大地震に備えた都市の防災対策の必要性・Early Warningの概要説明とこれからの課題等についてのお話を伺いました。とても丁寧にご説明いただき、学生の身にも分かりやすく、またお話の折々にこれからの課題も織り込まれていて、大変ためになる興味深い内容でした。
金森先生のご講演の様子
 
 Jim Mori先生のご講演は、Looking at Initiation of Earthquakesという題目で、主にP波の立ち上がりを用いた地震のマグニチュードの推定方法を説明されました。11個のP波の最初の立ち上がりの波形だけを見てどの地震が一番規模が大きいか当てる、クイズ形式の課題を取り混ぜながら、楽しくかつ新鮮な話題をお話いただきました。
Jim Mori先生のご講演の様子
 
 第一日目、二日目の日中の各先生方によるご講演の後には、夕食会・ポスターセッション・懇親会などが行われ、学生・研究者の垣根を越えて交流を深め合いました。懇親会では、神戸大学有志の方々主催のゲームも催され、大いに盛り上りました。
 ポスターセッションでは、実験モデルの提示や各地震の解明や、岩石学を盛り込んだ内容、面白いところでは、放射性廃棄物の処分方法の考察など、自分の研究成果や新たな研究のアイディアの発表といった、夏の学校ならではのユニークな内容も多くありました。また、ここでも学生・研究者の垣根を越えた、たくさんの意見が活発に交わされました。

懇親会の様子
 
 夏の学校は、学部生では普段お話を聞くことやお会いすることの難しい先生方に直接ご指導頂くよいチャンスになりました。また、同じ分野の第一線でご活躍なさっている方々からは、今後の研究方針などのアドバイスも頂くことも出来て、大変参考になりました。また、同世代の多くの学生と知り合い、研究の悩みを打ち明けあったり、励ましあったり、研究だけでは経験できないたくさんの貴重な体験を経験することができたと思います。