ビルディング技術の進歩に関する国際会議 出席報告
(ABT2002:
International Conference on Advances in Building Technology)
鹿島建設株式会社小堀研究室・倉田成人
ビルディング技術の進歩に関する国際会議(ABT2002: International Conference on Advances in Building Technology、以降会議と称す)に出席したので、その概要を報告する。筆者の専門が構造制御及び構造ヘルスモニタリングであるため、報告がそちらに偏りがちになってしまうことをお許しいただきたい。
1. 会議概要
(1) 会議名
International Conference on Advances in Building Technology(ABT2002、ビルディング技術の進歩に関する国際会議)
(2) 日程
2002年12月3日(火)〜12月6日(金)
(3) 場所
シェラトンホテル
(4) 主催
Faculty of Construction and Land Use, The Hong Kong Polytechnic University(香港理工大学)
(5) 目的
ビルディングに関係する技術の最新の研究成果と周辺の話題についての情報交換及び研究者と実務者の国際的な交流
(6) 出席者
・ 配布された出席者名簿(添付資料2)によると参加者の合計は345名で、国別では、香港が230名で大多数である。その他に、中国としての登録が22名、米国30名、英国19名、日本15名、オーストラリア13名、オランダ6名、カナダ・ドイツ・デンマーク各2名、ベトナム・イタリア・イスラエル・シンガポール各1名となっている。
・ 日本からは、田村幸雄教授(東京工芸大学)、三田彰助教授(慶應義塾大学)、藤谷秀雄博士・福山洋博士(建築研究所)、吉田治典教授(京都大学環境地球工学)、宇田川光弘教授(工学院大学建築学科環境コース)、及び筆者の他、大学院の学生で計15名であった。
・ 構造制御分野では、スペンサー教授・バーグマン教授(イリノイ大学アーバナシャンペイン校)、ヤング教授(カリフォルニア大学アーバイン校)、チェン教授(ミズーリ・ローラ大学)、リー教授(ニューヨーク市立大学バッファロー校)、ヤンヨー博士(ロードコーポレーション)などである。米国NSFからもリウ博士、チョン博士が参加した。
(7) 開催要領
12月3日(火)
会議登録、歓迎レセプション
12月4日(水)
開会式:
・ Prof. J. M. Ko(The Hong Kong Polytechnic University、会議委員長)
・ Prof. Chung-kwong Poon(President of The Hong Kong Polytechnic University)
・ Mr. Keith Kerr(Chairman of Provisional Construction Industry Co-ordination Board)
基調講演:
・ “Creating competitive advantage and profits with technology in the construction sector”, R. Flanagan, The University of Reading, UK
・ “Advances in materials and mechanics”, K. P. Chong, National Science
Foundation,
・ “Human requirements in future air-conditioned environments”, P. O. Fanger, Technical University of Denmark, Denmark
パラレルセッション:
・ High performance concrete/composites (I)
・ Earthquake resistant theory and applications (I), (II)
・ Energy/water conservation in buildings (I), (II)
・ Graphics and virtual reality applications
・ Construction technologies/plants
・ Earthquake engineering
・ Project management support (I)
・ Composite construction
・ Fire safety engineering
・ Research at the ATLSS Centre on new materials and systems to resist earthquakes and wind
12月5日(木)
基調講演:
・ “Recent topics in wind engineering focusing on monitoring techniques”,
Y. Tamura, Tokyo Institute of Polytechnics,
・ “A conception of casualty control based seismic design for buildings”,
L. L. Xie, Institute of Engineering Mechanics, China Seismological Bureau,
・ “Advances in IT for
building design”, J. S. Gero,
パラレルセッション:
・ High performance concrete/composites (II)
・ Structural systems and design
・ Indoor environmental control
・ Building process integration/coordination
・ Composites for housing
・ Smart structure for dynamic hazard mitigation (I)
・ Energy/water conservation in buildings (III)
・ Project managements support systems (II)
・ Flexible manufacturing system in construction
・ Structural analysis research at the
・ Sustainable building (I)
・ Wind engineering
12月6日(金)
基調講演:
・ “Advances in concrete technology”, S. P. Shah,
・ “Information technology support to improved construction processes:
Inter-disciplinarity in research and practice”, M. Betts,
・ “Thermal radiation effects and their determination in room fires”,
K. T. Yang, University of Notre Dame,
パラレルセッション:
・ FRP composite, retrofit and repair technologies
・ Monitoring technologies, damage detection and vibration control (I)
・ Recycling technologies
・ GIS/GPS applications
・ Structural bamboo and bamboo scaffolding in building construction
・ Smart structures for dynamic hazard mitigation (II)
・ Advanced performance modeling
・ Advances in panel systems
・ Industrialized housing
・ Monitoring technologies, damage detection and vibration control (II)
・ Commissioning and energy management
・ Sustainable building (II)
(8) 講演の傾向
会議では、毎日3題ずつ基調講演が行われ、その後、4つの会場に分かれてパラレルセッションが行われた。パラレルセッションは、セッションオーガナイザーから講演者が依頼を受ける「チームプレゼンテーション」と、3つの分野からなる一般応募者の講演から構成された。それぞれのセッションでの論文数を下記に示す。
表1 チームプレゼンテーションのセッション
表2 一般応募講演のセッション
6. まとめと所感
ビルディングに関係する技術の最新の研究成果と周辺の話題についての情報交換及び研究者と実務者の国際的な交流を目的とした本会議は、多くの参加者を得て、盛況のうちに終了した。扱われた話題は、建設/構造技術、環境技術、情報技術等、広範であったが、環境及び情報技術は時代の要請を反映している分野である。会議では、毎朝、大会場で3題ずつ基調講演が行われ、その後、4つの会場に分かれてパラレルセッションが行われた。1つのセッションでは、50〜80名程度の参加者で行われており、質問もしやすく有効な議論が行われやすい環境であった。参加者は、構造工学・地震工学・構造制御の分野、及び環境や情報技術(IT)の分野で、中心的に活躍している研究者・実務者であり、会議での質疑応答だけでなく、個別に研究者間で活発に情報収集、情報交換が行われるなど人的な交流が有意義であった。会場がホテルであり参加者のほとんどがそこに宿泊していることなどもあり、最終日でも参加者は多く見られた。
今回の会議では、構造制御の分野に関係する著名な研究者の出席が多く、スペンサー教授・バーグマン教授(イリノイ大学アーバナシャンペイン校)、ヤング教授(カリフォルニア大学アーバイン校)、三田助教授(慶應義塾大学)、チェン教授(ミズーリ・ローラ大学)、リー教授(ニューヨーク市立大学バッファロー校)、ヤンヨー博士(ロードコーポレーション)などの姿が見られた。また、構造制御研究をプロモートしてきた米国NSFからもリウ博士、チョン博士が参加しており、関心の高さが窺えた。そのために構造制御に関する最近の研究成果も多く見ることができたが、傾向として、構造制御関連の発表には参加者の関心が高いこと、アクティブ制御の研究発表は見当たらずセミアクティブ制御に移行していること、制御そのものだけでなくモニタリング・損傷検知といった機能に力点が置かれている研究が増えてきたことなどが指摘できる。これからの研究の方向として、新しいセンシング技術の開発とその応用、モニタリングシステムを利用した地震リスク低減手法の確立、それらを生かしたセミアクティブ制御手法の研究等があることが本会議からも窺えた。
開会式
Prof. J. S. Gero(University of Sydney)の基調講演
Prof. M. Betts(University of Salford)の基調講演
Prof. B. F. Spencer, Jr.(University of Illinois)による司会
晩餐会での乾杯
Dr. S. C. Liu(NSF)、Prof. L. A. Bergman(University of Illinois)と筆者