ACEE2004参加報告
防災科学技術研究所 新井 洋
1.はじめに
The 1st ASIA Conference on Earthquake Engineering(第1回アジア地震工学会議 / ACEE2004)が,The Association of Structural Engineers of the Philippines, Inc.(フィリピン構造技術者協会 / ASEP)の主催により,2004年3月5-6日の2日間にわたって,Manila Pavilion Hotelにおいて行われた.会議には,フィリピン,日本,タイ,インド,シンガポール,アメリカなどから約400名が参加し,地震工学・地震防災研究に関する招待論文5編と,採択された投稿論文75編のうち62編について口頭発表が行われ,活発な質疑応答や議論が展開された.筆者は,拙投稿論文の口頭発表者として本会議に参加する機会を得たので,ここにその概要を報告させて頂くこととした.
Manila
Pavilion Hotel
2.会議のテーマとプログラム
会議のテーマは“Science, Engineering, Rehabilitation and Response”だったそうで,そのプログラムは当初,次のようであった.
DAY 1: March
5, 2004 Friday
07:00 – Start of Registration
08:00 – Opening of Exhibit
09:00 – Opening Program
10:00 – 10:30 Break
10:30 – 11:50 Plenary Session I
11:50 – 12:50 Lunch
12:50 – 14:50 Technical Paper Session 1-A
(Convergence of Earthquake Related Studies by Specialists)
Technical Paper Session 1-B
(Large-Scale
Testing & Computer Modeling of Structures)
Continuing Professional Development Lecture 1
(Seismic Hazard, Risk & Ground Response Analysis)
14:50 – 15:10 Break
15:10 – 17:30 Technical Paper Session 2-A
(Building Configuration, Seismic Performance & Design)
Technical Paper Session 2-B
(Disaster Reduction Planning : EqTAP Marikina Case Study)
18:00 – 19:00 Meeting with International Scientific Advisory Committee
19:00 – 22:00 Dinner & Fellowship Night
DAY 2: March 6,
2004 Saturday
08:30 – 10:00 Technical Paper Session 3-A
(Performance of Bridge Structures)
Technical Paper Session 3-B
(Geology, Seismology & Ground Motion)
Continuing Professional Development Lecture 2
(Seismic Design Codes for Buildings)
10:00 – 10:30 Break
10:30 – 12:30 Technical Paper Session 4-A
(Geotechnical Earthquake Engineering)
Technical Paper Session 4-B
(Seismic Hazard, Risk & Damage Assessment)
Continuing Professional Development Lecture 3
(Nonlinear Analysis of RC Buildings)
12:30 – 13:30 Lunch
13:30 – 15:30 Technical Paper Session 5-A
(Disaster Awareness, Preparedness & Education)
Technical Paper Session 5-B
(Applied Technologies for Earthquake Engineering)
Continuing Professional Development Lecture 4
(Seismic Design of Special Structures)
15:30 – 16:00 Break
16:00 – 18:00 Plenary Session II
18:00 – 18:30 Closing Program
実際には,BreakやLunchに予定以上の時間を大幅に費やして,その後のセッションの進行に影響を与えたり,予定する発表者が会場に来ないため,急遽,平行する複数セッションを一つにまとめて行ったりと,フィリピンならでは(?)の予定変更がいくつかあった.しかし,結果的には,終了予定時刻を30分超過する程度で,全プログラムが無事に(?)終了したようであった.
筆者は,全てのセッションを見たり聞いたりして回れたわけではないが,以下に,会議の概要を,上述のプログラムに沿って紹介させて頂くこととしたい.
3.会議初日の概要
Opening Programでは,先ず,本会議の主催であるASEP理事長のRonaldo S. Ison氏と本会議のChairであるCesar C. Pabalan氏(ASEP副理事長)から開会の挨拶があった.次に,Hon E. Alabastro氏(フィリピン科学技術省)とRenanto U. Solidum氏(フィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)所長)から基調演説があった.また,山崎文雄氏(千葉大学教授),Yuan-Sen Yang氏(国家地震工程研究中心 / 台湾),Panitan Lukkunaprasit氏(Chulalongkorn大学教授 / タイ),Tso-Chien Pan氏(Nanyang工科大学教授 / シンガポール)から,各国の地震工学会を代表して開会の祝辞が述べられた.
Registrationの様子 Pabalan氏による開会の挨拶
主催側(ASEP)の先生方 山崎先生,Yang先生,Pan先生
続くPlenary Session Iでは,招待論文5編のうち2編の講演があった.亀田弘行氏(防災科学技術研究所地震防災フロンティア研究センター,センター長)は,”EqTAP - a Multi-disciplinary Innovation of Earthquake and Tsunami Disaster Reduction Research for Asia-Pacific Regions”と題して講演した.川島一彦氏(東京工業大学教授)は,”New Technologies for Enhancing the Seismic Performance of Reinforced Concrete Bridges”と題して講演した.亀田・川島両先生および本会議の開催において多大な貢献をされたRonaldo S. Ison氏とCesar C. Pabalan氏には,感謝の意として盾が進呈された.
亀田先生による招待講演 川島先生による招待講演
盾の進呈式の様子
昼食を挟んで,午後からは,3つの会場に分かれて,Technical Paper Session (A, B)とContinuing Professional Development Lectureとが平行して行われた.ここでは,採択された投稿論文(アブストラクト査読付き)の口頭発表が行われた.冒頭にも記したように,採択された投稿論文数が75編と少ないことから,各論文の持ち時間として,平均して発表20分,質疑応答10分の計30分程度が与えられた.このため,いずれの論文においても十分に意を尽くした発表と議論が行われたようである.筆者は,主としてTechnical Paper Session (A)の会場に居たが,時折垣間見た他の会場でも,そのような雰囲気が感じられた.
一方で,会場には,発表中だろうが質疑応答中だろうが関係なく,ホテルの給仕がお茶とお菓子を運んで来てくれ,一部では会議そっちのけで完全にお茶会と化していた地域もあったようだ.しかし,この辺りもフィリピンならでは(?)のことかもしれない.
初日の昼食の様子(その1) 初日の昼食の様子(その2)
発表の様子(Daligdig氏) 発表の様子(久保先生)
質問の様子(その1) 質問の様子(その2)
発表の様子(Dytoc氏) 発表中の会場の様子
発表の様子(藤本氏) 質問の様子(Punongbyan氏)
発表の様子(Pennung先生) 発表の様子(年縄先生)
初日のセッションが全て終わり,その夜に開催されたレセプションでは,会議参加者や関係者など約60名が美味な中華料理を堪能しながら,地震工学・地震防災の討議を繰り広げていた.また,各国ののど自慢達が腕(のど?)を振るったBGM(カラオケ)もレセプションを盛り上げた.
レセプションの様子 カラオケの様子
熱唱する亀田先生 熱唱する山崎先生
4.会議最終日の概要
最終日のセッションは,先ず,投稿論文の口頭発表の続きとして,朝8時半から昼食を挟んで午後3時半まで,初日と同様に,Technical Paper SessionとContinuing Professional Development Lectureが平行して行われた.この日も,やはり,一部の地域ではお茶会がしっかりと行われていたようである.
発表の様子(Pan先生) 発表の様子(松岡氏)
質問の様子(その3) 質問に答える胡内氏
最終日の昼食の様子 発表の様子(Thuy氏)
発表中の会場の様子 発表の様子(立木先生)
発表の様子(馬場氏)
投稿論文の口頭発表セッションが全て終わり,少しの休憩の後,Plenary Session IIが行われた.ここでは,招待論文5編のうち残り3編の講演があった.Benito M. Pacheco氏(Vibrametric社,社長 / フィリピン)は,” Knowing the Seismic Capacity of Our Existing Buildings: An Overview of Perspectives and Procedures”と題して講演した.Chin-Hsun Yeh氏(国家地震工程研究中心 / 台湾)らは,”Application of Early Seismic Loss Estimation in Taiwan”と題して講演した.Renato U. Solidum氏(PHIVOLVS所長 / フィリピン)らは,”Evaluation of Seismic Damages & Vulnerabilities of Metro Manila”と題して講演した(実際の講演は,代理のRamon J. Santiago氏が行った).
本会議の全ての発表・講演等が終了し,続いてClosing Programが行われた.Cesar C. Pabalan氏により,次回のACEEが2年後の2006年に再度フィリピン国内で行われることが述べられた.その次のACEEは2008年にバンコク(タイ)で開催される予定とのことである.最後に,Plenary Session IIでご講演されたBenito M. Pacheco氏,Chin-Hsun Yeh氏,Renato U. Solidum氏の3氏にも,Plenary Session Iと同様,感謝の意として盾が進呈された.以上をもって閉会が宣言され,ここに2日間に渡って開催された記念すべき第1回アジア地震工学会議の幕が閉じた.
Pacheco氏による招待講演 Yeh氏らによる招待講演
Solidum氏らによる招待講演 盾の進呈式の様子(その1)
(写真は代理講演のSantiago氏)
盾の進呈式の様子(その2)
5.技術展示コーナーとお土産品コーナー
ところで,初日,最終日とも,口頭発表セッションと平行して,技術展示コーナーが設けられた.ここには,PHIVOLCS(フィリピン火山地震研究所)やフィリピンの建設会社などが出展していた.中に入って進んで行くと,途中から地場産業等のお土産品コーナーに変わっていた.つまり,技術展示コーナーとお土産品コーナーが連続していたのである.これも,フィリピンならでは(?)のイベントだったかもしれない.逆にそれもあってか,全体的にはなかなかの盛況ぶりであった.
技術展示コーナーの入り口 技術展示コーナーの様子(その1)
技術展示コーナーの様子(その2) 技術展示コーナーの様子(その3)
お土産品コーナーの様子 会議公式グッズの販売コーナー
PHIVOLCSの展示(その1) PHIVOLCSの展示(その2)
6.おわりに
本会議は,その名前の示すとおり,世界地震工学会議(World Conference on Earthquake Engineering / WCEE)のアジア版となることを期待して命名・開催された国際会議である.すなわち,本会議には,アジア諸国のできるだけ多くの研究者あるいは研究機関・グループから,地震工学・地震防災に関するできるだけ多くの研究テーマについて質の高い論文を公募・採択し,その発表・議論の場とすることが望まれている.今後,本会議が名実ともにそのような国際会議として成長していくことを希望しながら,本報告を終えることとしたい.
以上.