九州大学・助手 古川愛子
京都大学・助手 小野祐輔
The 13th World Conference on Earthquake Engineering(第13回世界地震工学会議 / 13WCEE)が、Canadian Association for Earthquake Engineering(カナダ地震工学協会 / CAEE)の主催により、2004年8月1-6日の6日間にわたって、Vancouver Convention & Exhibition Centreにおいて行われました。本稿ではその概要を報告させて頂きます。
The 13th World Conference on Earthquake Engineeringは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州のバンクーバーで開催されました。
バンクーバーはカナダ太平洋岸に位置する港湾都市で、商業、工業、金融、観光、文化などで州の中枢となっています。
人口はおよそ50万人で、トロント、モントリオールに続くカナダ第三位の都市です。
主要産業は木製品・金属製品・精製石油・食品加工・印刷などで、鉄道と高速道路が集中しています。
写真1:会場となったカナダプレイス | 写真2:会場近くのガスタウン |
毎日午前中の第1セッションには基調講演が行われ、著名な先生方の大変興味深いご講演を聴くことができました。
会議の初日である1日の午前中には香川大学のFinn教授、コーネル大学のO'Rourke教授、コスタリカ大学のGuitierrez教授が基調講演をされました。
Finn教授は「Characterizing Pile Foundations for Evaluation of Performance
Based Seismic Design of Critical Lifeline Structures」というタイトルで、杭基礎構造物の耐震設計に用いる様々な動的解析手法について、それぞれの長所・短所などについて整理したお話されました。O'Rourke教授は「Advances
in lifeline earthquake engineering」というタイトルで、ライフライン地震工学の枠組みとその発展について、ご講演されました。Guitierrez教授のご講演は、「Notes
on the seismic adequacy of vernacular buildings」というタイトルで行われ、世界各地でその地域固有の材料と工法によって建設されている構造物の抱える地震工学上の問題点とその対策法についてお話を伺うことができました。
基調講演の後、午前第2、午後第1、第2セッションにおいて口頭発表が行われました。口頭発表は8〜9つの会場に分かれてのパラレルセッションで、どのセッションにおいても非常に活発な議論が交わされていました。
ポスターセッションは、毎日約340の発表が行われ、熱い議論が交わされていました。軽食、昼食をとる会場と同じ会場で行われたことが、参加者のポスターへの関心を高め、より交流を深めたと思います。どのポスターにも発表者の個性が表れており、またより分かりやすく伝える為の工夫が隅々になされており、非常に参考になりました。
写真3:ポスターを前に議論している様子 | 写真4:掲示されたポスター |
古川は、構造物の損傷同定に関する研究を行っていますので、同定や振動に関する発表を中心に聞いて回りました。興味を持った発表は、不完全なモードデータを用いてFEMモデルのパラメータをアップデートする手法に関する発表と、部分空間法に基づいた構造システムのブラインド同定に関するものです。ユニークなアイデアを駆使した同定手法のアルゴリズムに関する様々な研究を拝聴して、非常に刺激を受けました。
本稿では、第13回世界地震工学会議への参加報告をまとめました。プログラムの書かれた'Technical Program and Handbook'だけで408ページもあるような、とにかく大規模な国際会議でした。
学術雑誌で論文を読んだことのある、活字でしかお目にかかったことのない先生方・研究者の方々のご発表を直接聞くことが出来たことを嬉しく思います。また、過去に勉強した論文の著者と直接お話することが出来たときは胸が躍りました。最近の研究動向を知り,情報や技術を交換しあえる非常に良い機会となったと思います。
次回は,4年後の2008年に北京において開催される予定です。また、次期IAEE会長に防災科学技術研究所理事長の片山恒雄先生が選出されましたこともご報告させて頂きます。