Forum on Recent Advancements and Future International Collaboration in Earthquake Engineering

清水善久(東京ガス)

大町達夫(東工大)

写真1:石原研而JAEE前会長による開会の挨拶

 

8月1〜6日にカナダのバンクーバーにて行われた13WCEE(第13回世界地震工学会議)の中で、日本地震工学会(JAEE)主催にてForum on Recent Advancements and Future International Collaboration in Earthquake Engineering(地震工学における最近の進歩と将来における国際協力に関するフォーラム)と題したフォーラムを開催した。

JAEE会長である石原研而中央大学教授の開会の挨拶(写真1)に引き続き、Cornell大学のThomas D. ORourke教授が、地震工学における国際協力について講演を行った(写真2)。その中でORourke教授は、地震の影響や新技術に関する理解の深化やデータ・知見の共有などの国際協力の利点を述べると共に、実際に行われている国際協力として、EERI(Earthquake Engineering Research Institute)とIAEE(The International Association for Earthquake Engineering)の共同プロジェクトや、1988年以来のべ9回にわたり実施してきたライフラインおよび液状化に関する日米ワークショップなどを紹介した。

写真2:Cornell大学ORourke教授による講演

 

次に、日本の地震工学分野における最新技術の紹介が行われた。座長は慶応大学北川良和教授が務め、4人のプレゼンテーターが報告を行った。

東京大学工藤一嘉助教授は、「日本における地震動観測の現状」と題して、兵庫県南部地震後に公共機関や民間団体において構築された強震動観測網を紹介した。また中央大学国生剛治教授は、「地盤工学分野において、神戸地震後に何を学び何を行ってきたか」と題して、地盤の液状化およびそれに伴う流動の分野において、兵庫県南部地震後に新たに得られた知見や改定された設計指針についてのまとめを報告した。名古屋大学勅使川原正臣教授は、「日本における建築の耐震設計と耐震補強に関する報告」と題して、兵庫県南部地震後に制定された建築構造物の耐震設計における耐震性能の考え方や設計地震動、耐震性評価手法について説明すると共に、新しい耐震補強手法について多くの実例を挙げながら紹介した。最後に東京工業大学の川島一彦教授が、「日本における橋梁の耐震設計と耐震補強に関する報告」と題して、道路橋示方書の改定の歴史を振り返りながら、兵庫県南部地震後に改定された耐震設計指針における新しい考え方を紹介すると共に、現実的な修理期間や修理費用の設定、建設費用と耐震性能の関係における将来の可能性について言及した(写真3)。

 

写真3:東京工業大学川島一彦教授による報告

 

なお本フォーラムの会場においては、地震工学会論文集特別号(Recent Developments of Research and Practice on Earthquake Engineering in Japan, Vol. 4, No. 3, 2004)に掲載された56篇の論文の電子ファイルをCD-ROM(写真4)にて海外の研究者に無料で配布し、好評を博した。

写真4:会場にて配布した地震工学会論文集特別号のCD-ROM

 

30分間の休憩の後、地震工学分野における最近の研究や技術の開発動向について、次の6氏から順に各国の状況報告(National Report)が、東京工業大学大町達夫教授の司会のもとに行なわれた。

J. P. Moehle(University of California, Berkely, PEER所長、米国)

C. Comartin (Comartin-Reis Engineers 会長、EERI次期会長、米国)

Z. Wang (China Earthquake Administration, 構造工学研究所所長、中国)

S. M. Alcocer (National Autonomous University of Mexico, 工学研究所所長、メキシコ)

E. F. Cruz (Catholic University, Santiago、構造工学科教授、チリ)

R. Blazques (University of Castilla, イベロアメリカ地震工学会会長、スペイン)

各国からの報告後、討議に移り、米国Cornell大学のT.D. ORourke教授、カナダBritish Columbia大学のW.D.L. Finn 教授とS. Cherry教授、およびペルーCISMIDのKuroiwa教授が地震工学分野における国際協力や共同研究に関してそれぞれ意見を述べた。最後に司会者が「WCEEを、単に研究発表や意見交換だけでなく、本セッションのような国際協力のあり方や具体策を議論する場として活用することが望ましく、たとえば脆弱な個人住宅の補強策などは早急に共同研究すべき重要課題である」と述べて、本セッションを締めくくった。