九州大学新キャンパス(伊都キャンパス)のご紹介

九州大学 古川愛子

1. はじめに

九州大学は,「時代の変化に応じて自律的に変革し,活力を維持し続ける開かれた大学の構築」と,「それに相応しい研究・教育拠点の創造」をコンセプトに,新たな改革を進めつつあります.新しく生まれ変わる九州大学の器として,平成17年に福岡市西区元岡・桑原地区,前原市,志摩町にまたがる新キャンパス(伊都キャンパス)が誕生しました.

伊都キャンパスは,東西約3km,南北約2.5km,275ヘクタールの広大な敷地です.博多湾の西,糸島半島のほぼ中央に位置しており,福岡の中心から公共交通機関で約40〜50分の距離にあります.ここに箱崎地区,六本松地区,原町地区のキャンパスを統合移転し,人口約1万6千人,延べ床面積約50万平方mの施設を予定しています.

伊都キャンパスという名称の由来は,周辺の地域が「伊都の国」と呼ばれていたことに由来しています.本コラムでは,伊都キャンパスについてご紹介させていただきます.

2. 移転スケジュール

伊都キャンパスへの移転は,3期に分けて行われます.第Iステージは,工学系が対象となっており,平成17〜19年度にかけて行われています.第IIステージは,全学教育(教養)と文科系の研究院,理学部数学科が対象となっており,平成20〜23年度に行われます.第IIIステージは,残りの理学系,文系,農学系が対象となっており,平成24〜31年度に行われます.

建設デザイン部門・環境都市部門は,19年3月に教育研究棟の移転が完了したところであり,現在(19年5月6日現在)は実験棟の移設の真っ最中です.建設デザイン部門・環境都市部門の研究室はウェスト2号館の9階〜11階にあります.

3. 教育研究棟の概要

教育研究棟の特徴は,九州大学の学府・研究院制度の理念を空間的に表現したことにあります.建物の低層部に「学部」の空間が,中高層部に「学府(大学院生が所属)・研究院(教員が所属)」の空間が配置されています.これにより講義と講義の間に大量移動する学部学生の動線を処理するとともに,キャンパス内の活気を演出します.また,中高層部に学府・研究院を置くことにより,大学院の静粛な研究環境を確保しており,吹き抜けを配置して採光,通風等に配慮し,良好な室内環境を確保しています.

(1)工学系研究教育棟ウエスト2号館

ウエスト2号館は,主に工学系の地球環境工学系とシステム情報科学系が入っている建物です.建物はPFI(Private Finance Initiative)事業を採用し,設計,施設建設,維持管理などに民間の資金,経営能力及び技術的能力が活用されています.建物の規模は地上11階,地下1階建てで,延べ面積は約54,400平方メートルです.

(2)工学系研究教育棟ウエスト3号館・ 4号館

ウエスト3号館・4号館は,主に工学系の機械航空工学系と物質科学工学系が入っている建物です.建物の規模は地上9階,地下1階建てで,延べ面積は約55,500平方メートルです.

4. その他の施設

(1)ビッグオレンジ(情報発信拠点)

伊都キャンパスの通用門のあたりで最初に見える建物『Big Orange(ビッグオレンジ)』は,伊都キャンパスが完成するまでの間,キャンパスの整備状況や九州大学学術研究都市構想,キャンパス周辺地域の資源をパネルや模型・映像を用いて来訪者の方々に紹介しています.

『Big Orange(ビッグオレンジ)』の名称は,伊都キャンパスが建設されている丘陵地が,かつてみかん園であったことに由来しています.

(2)給水センター

給水センターは,伊都キャンパス全体に上水と実験用水及び生活排水を処理した再生水を配水する施設です.周辺地域の地下水への影響を考慮して,井戸水は使用せずに,生活排水,食堂厨房排水,実験排水を再生処理し,実験用水,トイレ洗浄水として再利用します.環境配慮と経費節減が図れるよう再生水処理システムを導入しています.

(3) エネルギーセンター

エネルギーセンターは,伊都キャンパス全体に電気エネルギーを供給する施設です.エネルギー総合運用監視センターとしての役割も果たしています.

(4)生活支援施設ビッグどら(食堂・売店・書店)

生活支援施設「ビッグどら」は,伊都キャンパスでの学生生活の中心施設です.コンパやパーティにも利用可能なゆとりのスペースを持ち,約50種類の食事を提供する食堂・喫茶店,書店,売店(コンビニ)が入っています.食堂は一般の方の利用も可能となっており,学生に交じって伊都キャンパスの見学に訪れた方が食事をする姿も見かけられます.

また,ビッグどら以外にも工学系研究教育棟ウエスト2号館に生協の売店が入っており,学生生活をサポートしています.

5. おわりに

本コラムでは,九州大学の新キャンパス(伊都キャンパス)について紹介させていただきました.情報源として,九州大学の広報誌である「九大広報」を参考にさせていただきました.

平成19年8月28日から30日には,伊都キャンパスで土木学会主催の地震工学研究発表会が開催されます.日本地震工学会会員の方で参加される方も多いと思われますので,最後に,交通アクセスについて説明いたします.

(1)飛行機利用

福岡空港-(地下鉄・25分)-姪浜-(JR筑肥線・9分)-九大学研都市駅-(昭和バス・15分)-九大工学部前

(2)新幹線利用

博多駅-(地下鉄・20分)-姪浜(JR筑肥線・9分)-九大学研都市駅-(昭和バス・15分)-九大工学部前

博多駅-(西鉄バス・55分)-九大工学部前

伊都キャンパスへのアクセス情報は以下のHPでご覧になられます.
http://suisin.jimu.kyushu-u.ac.jp/info/index.html

バスの本数は市内ほど多くありません.昭和バスのHP(http://www.showa-bus.jp/jikokuhyou/kyuudai.htm),西鉄バスのHP(http://www.nishitetsu.co.jp/)でご確認ください.