地震および地震動に関するウェブ上の情報
現在のようにインターネットが普及し,本ニューズレターもインターネット配信されるようになると,情報の価値そのものに変化が生じてきているように思われます.すなわち,公開されている最新の1次情報と最良の2次情報に多くの人々が簡単にアクセスできるようになった結果,アクセス上の利点を有する次善の2次情報は,もはやほとんど意味を持たない状況になりつつあるようです.
以上の観点より,定期的に刊行されるニューズレターでは,平均的な会員の知識や興味に合致し,かつ学会の方向性や観点を重視した特色のある記事(2次情報),ならびに最新の1次情報や最良の2次情報を入手する方法等の提示に意味があるかと思われます.また,これらの情報の入手先が固定化されているものであるならば,会員ウェブ上の関連リンク先に登録されるのが望ましいかもしれません.
ここでは,地震および地震動についてよく参照されるURLを,日本の公的な機関に関してクラスわけしながら紹介します.そのクラスわけは,地震防災の総合的なページ,地震学および地震工学一般の参考書的内容,地域的な特徴に関する情報,定常的に公表される地震および地震動データ,ならびにソフトウェアとしました.
1.
地震防災の総合的なページ
内閣府の政策統括官(防災担当)により防災情報のページが開設されており,そのメニュー下の「緊急災害情報」で芸予地震等の最近の地震および被害概要が説明され,また「地震被害想定支援マニュアル」よりwindows上で動作する地震被害想定支援ツールをダウンロードすることができます.同メニュー下の「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」では兵庫県南部地震と被害の概要ならびに震災後の対応と復旧に関する教訓がデータベース化され,また「わが国の震災対策」には東海地震等の個別の震災対策および地震防災情報システムの開発に代表される包括的な震災対策が述べられています.
2.
地震学および地震工学一般
防災科学技術研究所の強震ネットワークK-NETのインフォメーション中にWebText-強震動の基礎があり,地震の基礎知識,地震の応用知識,ならびに地震動の数値計算法のV部構成で,広範な内容が丁寧に解説されています. 第I部は強震動を学ぶために必要な地震学の基礎を,第II部は強震動の表現方法ならびに第I部で扱いきれない課題を,第III部は弾性波動論のかなり専門的な内容を扱っています.第T部では,プレートテクトニクス,日本の地震活動,マグニチュード,震源メカニズム,活断層,地盤特性,震度,入力地震動と耐震設計と,強震動を学ぶ上で必要なことがほぼカバーされ,第U部では,強震動の計測と解釈の後に,強震動予測や常時微動の応用に関する比較的最近の話題が続いています.
このWebText以外では,気象庁のメニュー中の気象・地震の知識にプレートと地震の関係が解説されており,計測震度の説明と算出方法も示されています.財団法人静岡総合研究機構防災情報研究所のパンフレット「東海地震とその対策」中の地震関連情報−2および−3には,震源メカニズム解等の見方が簡潔に解説され,用語集もまとめられています.
日本地震学会にも強震動地震学の成果を社会に還元するための強震動地震学基礎講座があり,主として強震動の予測に関する最近の成果が簡潔にまとめられています.また,同学会の広報誌「なるふる」では,学会活動の紹介とともに、地震学の研究成果や現状がわかりやすく解説されています.
3.
地震および地震動の地域的な特徴
地震調査研究推進本部の地震発生のメカニズムを探るには,地震発生のしくみの一般論に加えて,日本で起きる地震がタイプ別に示され,糸魚川−静岡構造線の評価等も含まれています.また,同本部の「日本の地震活動」には,日本周辺のプレートテクトニクスが詳細に説明されており,地方別の地震活動の特徴が被害地震ならびに各県で注意すべき活断層等とともに詳細に述べられています.さらに,地震調査研究推進本部のホームページより,過去および最新の活断層の評価結果を知ることができます.
4.
定常的に公表される地震および地震動データ
気象庁の地震情報より,また地震予知総合研究振興会(ADEP)の地震加速度情報ページより,最新の地震の震源情報および震度分布を見ることができます.また,地震加速度情報ページからは,1996年5月以降の地震を検索し,震源情報および各観測点での最大加速度あるいは計測震度を知ることができます.
東大地震研究所の地震予知情報センターの地震特集では,最近の主要な地震の震源情報および震度情報へのリンクが整理されています.また, EIC地震学ノートには,主要な地震の特徴と地震波解析結果が示されています.
防災科学技術研究所のFreesia広帯域地震観測網の地震のメカニズム解には,1997年以降の震源情報がデータベース化されています.同強震観測網(K-NET)では1996年5月以降の地震について,基盤強震観測網(KiK-net)では1997年10月以降の地震について,地震およびデータの検索,ならびに強震記録デジタルデータのダウンロードが可能です.
5.
ソフトウェア
K-NETの旧強震計ネットワークより,K-NETデータの波形・スペクトル作図プログラムをダウンロードすることができます.同プログラムを用いることにより,K-NETデータの波形および各種スペクトルを作図することができます.
内閣府の防災情報のページより,地震被害想定支援ツールをダウンロードすることができます.同プログラムでは発災日時・季節等と,点・線・面震源の別を含む震源情報を入力あるいは代表的な地震および活断層を選択することにより,地表最大速度や建物全壊数等を画像表示することができます.さらに,市町村ごとの集計結果をファイル出力することもできます.
以上のように,日本の公的な機関の一部に限っても,数多くの有用な情報を即座に入手することができます.さらに国内外の各種機関および個人のホームページにも同様に有用な情報があることを考えると,研究の発展と成果の普及におけるインターネットの力に圧倒される思いを感じます.