Not "if", but "when"
日本の地震工学シンポジウムは、世界地震工学会議(WCEE)が4年ごとに開かれていることに合わせ、この中間の年にやはり4年ごとに開かれ、2010年秋に開く会が第13回になる。2008年秋に中国北京郊外で開かれた世界地震工学会議が第14回だったから、1回少ない。1956年にサンフランシスコで第1回世界地震工学会議が開かれ、1960年に第2回が日本で開かれたあと、この日本のシンポジウムが始まったことが分かる。米国内、ヨーロッパ連合でもそれぞれ地区ごとの地震工学会議が開かれており、米国では第9回がカナダと合同で、ヨーロッパでは第14回が日本と同じ2010年に開かれる。しかし、アジアはまだ一つになってはいない。言葉や文化だけでなく経済力の違いがありすぐには難しいが、近年の地震災害がアジアに多いことを考えると、研究や技術開発およびこれらの普及に、協同で力を注いでいくべきと考える。今回はアジアの研究者を集めて円卓会議を持つ予定である。
我国は世界で起きる大きな地震の20%を受けていると言われる地震国であり、このことは世界に自慢できることではない。ただ、理学から工学、社会学の広い範囲にわたる問題に関して多くの研究を進め、土木構造、建築構造の耐震性確保から、地震後の政府や行政の対応、市民活動に広がる総合的な対策は、世界で最も進んでいるといえる。ただ、これでも十分といえないのが現状であり、さらなる研究、実際の対応への努力が必要である。
国が豊かになり、生活レベルが高まり、便利な社会になればなるほど、大地震によってこれらを失った場合の打撃が大きい。日常の人々の生活や社会の活動を大地震のあとにも失うことなく、もとの活動が維持でき、障害を受けたとしてもできる限り短い期間で復活できる復元力を社会に持たせなくてはならない。環境問題ではSustainable(持続性のある)な社会作りが重要課題であるが、地震工学の分野ではResilient(復元力のある)な社会作りが重要である。
国によらず、人々や社会には楽しいことつらいことが沢山ある。食料、住むところ、仕事、子供の将来、老後の生活、健康などいろいろである。地震災害低減だけが重要課題とはいえない。この中で、ほとんどの人々は大地震がもし来たらと考えていろいろな対策をする。しかし、必ずしも生きているうちに大地震が来るとは考えていない。この気持ちの持ちようが大災害を世界からなくせない理由である。もし来たらではなく、孫の世代までには必ず来るとして対策を講じなくては、地震災害は減らない。
この耐震工学の分野は我国に少ない輸出技術の一つである。日本のためだけでなく世界のためも考えて、行動を起こさねばならない。今回のシンポジウムには予想以上の約620の論文発表があり、ほかの企画も含めた活発な学術、技術の交換、議論が期待される。
第13回日本地震工学シンポジウム運営委員会
委員長 和田 章(東京工業大学教授)